古式鍛治工房くろがねでマチェットを作ってきた

古式鍛治工房くろがねでマチェットを作ってきた

赤く熱せられた鉄をカンカン叩いて刃物を作る。

誰もが一度はやってみたい事だと思いますが、御多分に洩れず私もかねてから憧れておりまして、高知県四万十川のほとりにある「古式鍛治工房くろがね」でマチェットを作ってまいりました。

ちなみにマチェットとは、日本語では山刀と呼ばれる刃物で、ホラー映画のジェイソンが持ってるやつといえばだいたいイメージがつきますかね。

キャンプでブッシュクラフト等をする際に、今まで斧とナイフでなんとかやってましたが、斧は重くて持ち運びしにくく、ナイフでは作業性が悪くなることも多く、ちょうどその間のやつが欲しかったため、刃渡り20cm程度の小型のマチェットを作ることにしました。

林信哉さん

先生はこちらの林さん。鍛治の職人って勝手に愛想の悪い無骨な人をイメージしていましたが、見ての通り柔和で気さくな素敵な方です。

工房くろがね看板

工房くろがねでは体験コースとして、1日で完結する「1日鍛冶屋体験コース」、3泊4日の「古式鍛造研修コース」「たたら製鉄研修コース」がありますが、基本的に決まったメニューといったものはなく参加者のやりたいことをできる限りやらせていただけます。最近では、イギリスから1人で来日した女性の鉄工アーティストが砂鉄を取りに行くところから、たたら製鉄をし、最終的に作品にしあげるところまでを2週間泊まり込みでされていたようです。自由度高い!

ちなみに砂鉄を取って刃物を作るところまでを体験するには最低でも1週間はかかるようです。

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工房は林先生と先代の師匠とほとんど手作りで作られたそうです。どれも味わいがあって男心をくすぐってきます。

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1日鍛冶屋体験コースは9時から17時までの間で可能な限り作業を進めます。現在は1日で4人まで参加できますが、その場合は最終的な仕上げは先生の方でしていただいて、後日完成品を送っていただけます。2人の場合は作るものにもよりますが、仕上げまで自分たちで行い持ち帰ることもできるみたいです。

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簡単な作業の説明を受けた後は、何を作るかを決めていきます。包丁等よく作るものであればサクサク作り出すのですが、マチェットは先生も初めて作るとのことで、実物大のデッサンを描いて作業を進めていきます。

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まずは素材となる鉄棒を熱し、必要な長さに切り出します。

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切り出しは先端が細くなった金槌を鉄棒に当て大槌で叩いて切り出します。

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切り出した鉄は真っ赤に輝いています。

ここからさらに叩いてゴールの形に近づけていきます。

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叩く作業性を良くするために取手を一時的に溶接してつけてやります。

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溶接をしたら、熱して、叩いてを繰り返していきます。

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適宜デッサンと見比べながらひたすら叩いて形を近づけていきます。

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このハンマーがなかなか重く叩き続けるのはなかなかの重労働です。特に軍手をしながらの作業になるのですっぽ抜けないようしっかり握り続けるのがとてもしんどかったです。グリップ力のある軍手があれば作業はぐっと楽になっていたかもしれません。

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叩き続けて形がある程度出来上がったら溶接していた取っ手を切り落とします。

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叩いて大まかの形は出来上がっていますが、ベルトサンダーでさらに形を仕上げていきます。

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形が仕上がったらハンドル用に穴を開けておきます。

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穴を開けグラインダーで荒く刃をつけてやるとだいぶそれっぽくなってきました。

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希望すれば銘入れもできます。自分でやることもできるし、先生にお願いすることもできます。銘入れはやり直しがきかない作業なので今回は先生にお願いしました。

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形が出来上がったら焼き入れを行います。焼き入れには最適な温度があり、その温度まで加熱できているかは鉄の色を見て判断するため、工房を真っ暗にした状態で行います。

加熱ができたら水にくぐらせ急冷しますが、必要以上に温度を下げてしまうと鉄が割れてしまったりとトラブルの原因になりうるため、鉄の表面に湧く泡の状態をみて水から引き上げます。

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ここにきて一気に職人的な経験が必要かつ失敗できない工程になり緊張感が増しますが、温度の判断や水の引き上げのタイミングは先生が張り付いて指示していただけます。

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焼き入れの後、焼き戻しという工程を経て作業は完了です。

気がつけば17時になっていて朝9時からあっという間に時間が過ぎてしまっていました。ただの鉄の棒だったものから、自分の作りたいものに一歩ずつ着実に近づいていくのは本当に面白かったです。

これが砂鉄を採取するところからやったらなおさら感慨深いだろうなー。

ここから仕上げの部分は先生の方にしていただいて後日郵送されてきます。

届いたらマチェットのハンドルやケースを作って出来上がりですが、それも今から楽しみ。早くキャンプで使ってやりたいなー。

ちなみにこれだけやっていただいて費用は1人1万円です。(参加人数によって若干上下しますが、詳しくはホームページを参照ください)

世界で一つだけの自分の刃物を自分自身で作り上げたら一生の宝物になるんじゃないでしょうか?是非是非遊びに行ってみてください!